最終章



入り江を離れて。来た道を戻るように階段を伝い砂浜から道路へ出て別荘を目指す。途中、最初に通りかかったアイスクリーム屋を見つけたが本当に立ち寄るつもりはないらしくちらちらと視線を送るのも虚しくあっさりと通り過ぎた。

そこはツンデレじゃないんだな、などとつまらないことを思いながら向かう先は別荘。肌の表面が酷く焼け付くような真夏の暑さを紛らわすように他愛のない会話を挟みながら着実に目的地へ。

「ウルフの尻尾って暑くないの?」
「短く切り揃えてるからな」
「何も変わってないように見えるけど」
「は。これだから餓鬼は」

海沿いの道を外れて草花のアーチを潜った小道の先。ようやく見えた目的の別荘を前にしてぶつけられた意地悪に膨れっ面をしていれば。


「おにぃ!」


思わぬ迎えが来てくれた。

「わっ、どうしたの?」

ルーティは抱き止めながら目を丸くする。

「だっていつの間にか居ないんだもん」

そういえば。自分は半ば追い出されるような形で別荘を出てきたのである。

「ウルフはあっちに行って!」

ピチカが睨むとウルフは小さく鼻を鳴らして別荘へと歩いていった。入れ替わるようにして駆け付けてくるディディー、トゥーン、ネス、リュカの四人にルーティは思わず疑問符を浮かべる。

「今日は遊びに行ってなかったんだね?」
「ご心配なく。これから遊ぶんで」

ディディーは頭の後ろで腕を組みながらにやり。

「おにぃ!」

ピチカはまるで小鳥が飛び立つように腕の中から飛び出すと振り返りながら無邪気に笑み。

「鬼ごっこしよっ!」
「……え?」
 
 
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