最終章
思わず、小さく目を開いた。
ぼんやりと思う。──この世界のことを。この世界のために戦ってきた証が今尚海の底で眠っているその光景を。それは果たして本当に静かで且つ穏やかで温もりを約束されているものだろうか。
「……うん」
ルーティは目を細めて答えた。
「……綺麗だよ」
同じ質問をされたら。
父は。同じように答えてくれただろうか。
「そうか」
ウルフはそれだけ返して、細かく問い質そうとはしなかった。そうして生まれた沈黙を埋めるべくして煙草に火をつける様子もなく小波や風の音が──海猫の鳴き声が心地良く。遠く。
「……戻るか」
綺麗じゃないはずがないんだ。
この世界を守ってきた人たちの意思が。
海も空も──目に映る全て。
だから。
僕たちは何度だって心を奪われるんだ。
だから守るんだ。守りたいんだ。
この世界を。
戦ってきた人たちの──その意思を。
「あっそうだ」
ルーティは思い出したように。
「アイス食べようよ」
「駄目だ」
「さっきは後にしろって」
「入らなくなるだろ」
夕飯はまだまだ先なのに。
「……ケチ」