最終章
冷房の効いた店内。仄かに香る珈琲の匂い──
ここは海の見える喫茶店。
「はー」
ルーティは店員に案内された先のソファーの上に腰を下ろすと目の前のテーブルの上に上体を投げ出した。行儀が悪いことは承知だが洒落にならないこの暑さの中オアシスに救われて伸びない人間なんているものか。
「何を頼むんだ」
これで相手がリンクだとかリムなら行儀が悪いからやめなさいとか言ってくるものだけど彼はそうじゃないから気が楽である。メニューを広げて訊ねるウルフにルーティはのそのそと体を起こしてそれから。
「一番安いのは?」
観光地の値段というものは馬鹿にならない。バカンスに来ておいて値段を気にするなど何を今更といったところだろうがそれでも屋敷に戻り現実に返った時にあれは要らない出費だったなぁなどと後悔はしたくない。
「水」
「うん」
ボケをかまされるものだとは思わなかった。
「タダだよね」
「二百円だな」
驚愕。
「そっその次に安いのは」
「高いとか安いとか気にするな」
ウルフは溜め息。
「ちなみに次に安いのはコーヒーだ」
ゔっ。ルーティは暫く頭を悩ませた後。
「……頑張ります」