第八章
アクエスは確かに蒼の孤島だった──初め飛行機から見た印象を打ち砕くその事実が知れただけで大収穫というもので。
「きっ」
帰るまでが遠足とはよく言ったもの。
「きゃーっ!」
まさか。不測の事態による悲鳴などではない。
ルーティ含む三人は高台から降りる為に坂道を下る予定だったがアクアヴォルフの御厚意というものに甘えてその背に乗せてもらい今まさに坂道を駆け降りていたのである。
「すごいすごい!」
これがまたなんと速いことだろう──風を一身に受けながら周囲の景色を眺めるだけの余裕が正直言って皆無である。
「サラマンダーよりはやーい!」
「それ言ったらスピカが発狂しそうだね」
「元ネタ知ってるのか?」
苦笑いを浮かべるルーティにソニックが続けて言うと先頭のアクアヴォルフの仔がよくも分かっていない様子できゃんきゃんと吠えた。
「あっ!」
ピチカは声を上げる。
「みてみて! もう別荘だよ!」
物事の終わりとは呆気ないものである。
「何だか寂しく感じちゃうな」
ルーティはぽつりと言った。
「ま。これ以上にない体験だったし」
後ろのソニックは笑いかける。
「また来ればいいだろ?」
──またいつか。
「……うんっ!」