第八章
「おにぃ!」
ふと現実に引き戻されたピチカが振り返る。
「カメラは!?」
「あっ」
圧巻の景色に目を奪われていたばかりにすっかりと忘れてしまっていた。ピチカに言われてようやく気付いたルーティはリュックサックの中のデジタルカメラを取りに行こうとするが。
「あぁー!?」
ピチカの声に足を止めて振り返る。
「……あ」
アクアヴォルフが遠吠えをやめて程なく変化は止まってしまったのだ。蒼の孤島はゆっくり此方の気など知らぬ顔で元の緑の姿を取り戻していく。
「戻っちゃった……」
「ご、ごめんねピチカ」
ルーティは申し訳なさそうに謝ったが。
「……ううん!」
ピチカは振り返ると後ろ手を組みながら。
「実際に見た方がずっとずっと綺麗だもん!」
「……そうだな」
ふっと笑みを零してソニックも賛同。
「僕たちだけの秘密だね!」
「秘密にするのか?」
「だって写真もないのに信じてくれないよ」
「……あ」
ルーティは思い付いたようにリュックサックの置いてある場所まで駆けていくとデジタルカメラを取り出してきて。
「、撮るの?」
「うん。あの子達と」
アクアヴォルフは眠そうに欠伸を漏らしている。
「フラッシュ焚いたら駄目だよ?」
「分かってるよ」
「自撮りは難しいな……」
三人はアクアヴォルフが上手く背景に入るように位置調整をするとぴったり肩を寄せ合い、ソニックがデジタルカメラを内側に向ける中ルーティとピチカはピースサイン。
「はいっ」
息を揃えて飛び切りの笑顔で。
「──チーズ!」