第八章
……進めど進めど。
「やっぱり間違ってたんじゃねーか?」
一向に木々のアーチは開かれず薄暗い森の中同じ景色を延々と繰り返すばかりでは例え五分十分と経たないにしてもそんな声が出てくる。
「もう少しだよ!」
ピチカは頬を膨らませた。またもここで気を悪くさせては厄介だとルーティは苦笑気味に。
「そうだよ。もう少し頑張って──」
振り返ったその時。
「ピチカ後ろっ!」
巨大な影を見つけて咄嗟に叫べば気付いたピチカは振り向きながら視界の端に確かにそれを捉えて振り下ろしの一撃を回避した。次いで島中に響き渡るような咆哮にソニックも思わず構える。
「あれは!」
ルーティは頷いた。
「アクアヴェア──!」
そう──現れたのは紺色の毛並みに首元の月を模したかのような白い毛の並びが特徴的なアクアヴォルフの天敵アクアヴェア。テレビのドキュメンタリーでしかその姿形を拝んだことはなかったが想像していた以上に大きすぎる!
「どうする!」
アクアヴェアはピチカに、いや──ピチカの抱きかかえたアクアヴォルフの仔に狙いを定めているようで力強く地を踏みながら距離を詰めていく。凶暴化した動物を鎮めるなら応戦するのが最適解なのだろうが特殊能力の使用はなるべく控えたいという話だけではなく何よりアクアヴェアは皮肉にも天然記念物に登録された保護対象。
手出しが出来ない以上は!
「──逃げよう!」