第八章
アクアヴォルフの仔は治療してもらえたこともあってすっかり心を許したのか吠えず暴れず大人しく、抱きかかえるピチカの腕の中から逃げ出そうとする素振りも見せなかった。
「かわいー!」
獣道に入る前のやり取りで気を悪くしていたピチカも今やすっかり上機嫌。アニマルセラピーの効果絶大。空気を持ち直したことでルーティは安堵して先行く足を早めていく。
「……あ」
先頭のルーティが不意に立ち止まった。
「どうしたんだ?」
「道が二つに分かれているんだ」
ルーティはうーんと唸る。
「木の棒とかないか?」
「古典的だよ」
「とにかく高台を目指すんだろ?」
ソニックは暫く二つの道を見比べて。
「こっちに行こうぜ」
指差した右の道へと足を進める。
「わっ」
直後にアクアヴォルフの仔がひと声鳴いた。
「お……おにぃ! ソニック!」
ピチカは呼び止める。
「こっちの道じゃないかな……?」
少し先を歩いていた二人は振り返った。
「どっちでもいいんじゃないか?」
「でも……この子が教えてくれた気がするの」
ピチカはアクアヴォルフの仔を見つめる。
「お前なぁ……動物の声が分かるのか?」
「わ、分かんないけどっ」
「じゃあそっちに行ってみようか」