第八章
ルーティは小さく息をついた。
「……これでよし、と」
三人が囲っていたのはアクエスにのみ生息する薄水色の毛並みが美しい、絶滅危惧種アクアヴォルフのまだ小さな子供だった。
どうやら怪我を負っていたらしく、だからといって人に対して警戒心が高いはずのアクアヴォルフが何故自分たちを頼るようにして追ってきたのかは分からないが、親も見かけないようだしまだ子供だからこそ頼らざるを得なかったのだろう。
彼らは人間に近く高い知能を持っていると聞くし鼻も利く。ルーティが怪我の治療に用いた消毒液の匂いを嗅ぎつけたのかもしれない。
「ったく、驚かせやがって」
「驚いたのはこっちの方だもん!」
ピチカは屈み込んでアクアヴォルフの仔をじっと見つめながら。
「凄く珍しいんでしょ? 島の人でも滅多に会えないって」
「アクアヴォルフは賢いから会う人間を選ぶ、とも言われているね」
ソニックは腕を組んで見下ろす。
「……でもなんで親がいないんだ?」
確かにそうである。けれど考えられる可能性はひとつ。
「天敵のアクアヴェアにやられちゃったのかもしれないね……」
ルーティが呟くと他二人は表情を沈ませた。
自分たちは確かに先に進まなければいけないがアクアヴォルフの仔を一匹残してはおけない。悩んでいる間にも時間は過ぎていくのだ。
「連れていこうよ!」
ピチカはぱっと顔を上げた。
「せめて見通しのいい、安全な場所まで!」