第八章
……歩けど歩けど。
誰も疲れたと声を上げて嘆きたいところだろうがそうしたところで消耗した体力の回復は図れない。早朝とはいえ此処は常夏の島、むわっとした熱気が常時付きまとって離れず汗が頬を垂れる。ルーティははあっと息を吐き出した。
また。すぐ側の茂みが揺れるといい加減にピチカは小さく息を吐き出してそれからきっと睨むようにして振り返った。何度も何度も――人をからかうみたいに、迷惑極まりないったらありゃしない。こうなったら鬼でも蛇でも相手になるんだから!
そう思うが早いのが戦士の性。がさがさと執拗に揺れる茂みに接近しつつ頬にはぱちぱちと青の閃光を走らせて瞳には闘志を。一見して大袈裟に見えるだろうが今の彼女はソニックにあしらわれた件もあって虫の居所が悪いのだ。
さあ、覚悟しなさいとばかりに茂みの前に立ち塞がり腕を払って茂みを払う。
――そして。
「きゃああぁあっ!」
ルーティとソニックは肩を跳ねて同時に振り返った。
ちょっと目を離した隙に――二人はくっと顔を顰めて駆けつける。
「ピチカ!」
「どうしたんだ!」
ところが恐る恐る振り向いた彼女にそれらしい怪我はなく。
「……それが」