第八章
こんな朝方に情報収集するのはちょっと段取りが悪すぎるのではないかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。本当かどうかは分からないが、朝日が出るまでに辿り着かなければいけないのなら疑っている場合じゃない。
「おにぃ?」
ルーティは早足で進み出る。男はその様子にさっぱり興味を示さなかったが、ルーティが手首を手荒に掴んでハンドルから引き剥がし、手に握っていたそれを無理矢理握らせるとさすがに男も驚いて顔を向けた。ルーティは手を離す。
「……足りるよね」
男は恐る恐る自分の手に握られたものを確認する。
「そこまでの怪我はさせてないはず。本当に大事なら使ってあげて」
――紛れもない、それは三枚の万札だった。
「……餓鬼が」
男は小さく溜め息を洩らした。
「一枚多い」
そう言って返し、男は残りの万札をポケットの中に突っ込む。
「えっ」
「じゃあな」
男はそれ以上聞く前にハンドルを握り、バイクを発進させた。空に喧しいエンジン音が鳴り響く。ライトが暗闇の中へ遠ざかっていくのをルーティはじっと見つめていた。――たまたま、いい人だったのかな。それとも。
「さっきの男の情報が確かなら、急ごう」
ソニックは腕時計を見遣る。
四時半。ここは少し走った方がいいかもしれない。