第八章
ピチカは小首を傾げた。ソニックも怪訝そうに振り返って見つめていたが、男が舌打ち交じりに手荒く振りほどくと視線を戻し、きっと睨みつけて。
「……君は。この島の住民?」
「ああ?」
男は引き続きバイクのキーを探しながら、
「それがどうしたってんだ」
もしかしたら。そんな期待を胸に、ルーティは口を開く。
「……アクエスの秘密。この島が蒼いと云われる、本当の理由が知りたい」
男は驚いたようにはっと目を開いて手を止めた。ゆっくりと視線を向けて、真剣な眼差しを返す少年を見つめる。後ろの少女は、またも隠れてしまったが。
「んなもん、知ってどうすんだよ」
「知りたいだけ。聞かれたら、誰かに教えるかもしれない」
ただの好奇心かよ。餓鬼の思いつきそうなことだ。
「……、」
ズボンの後ろポケットの中にそれはあった。取り出して、挿し込む。捻ればすぐにエンジンはかかって、バイクが低く唸り始める。男はハンドルを握って。
「おい!」
「るっせーなぁ」
男はソニックをひと睨み。
「……神社だよ。ちょっと外れの方にある」
「もしかして蒼ノ宮神社?」
「そう。祭壇じゃなくて森に続いてる道の方。中は入り組んでるだろうが、上手く進んでいけば高台に出る。いいか。朝日が出る前に辿り着け」