第八章
「おっ。ルーティ、何を買ってきたんだ?」
部屋に戻って浴衣を脱いでいると、同室のロイが早速、買い物袋の中身を見てやろうとそろそろと手を伸ばした。ルーティはすかさず引っ込めて、
「駄目だってば!」
途端、ロイはにやーっと表情を変える。
「はっはーん……ま、ルーティもそういう年頃ってわけだ」
な、何か勘違いされてる。
とはいえ、否定すればじゃあそれはなんだと飛びかかってきそうなので、ここはあえての無視を選択。……浴衣。来年も着れるよう大事に仕舞っておかないとな。
「る、ルーティ殿のナマ着替えっ……」
「おーいなんか見られてるぞ」
「気にしなくていいよ」
扉の隙間から突き刺さるいやらしい視線も、無視。
おやすみ、と声をかけようとした頃にはロイは眠っていた。彼が持参した携帯ゲーム機の電源が入れっぱなしだったので、勝手ながら拝借してセーブ、電源を切る。
時計を見ても分かるように、真夏の夜はまだまだ長い。せっかくの休みなのだし夜中に遊び尽くすのも悪くないのだが、残念ながら明日は早いのだ。もちろん、個人的に。ルーティは携帯のアラームをセットして消灯、ロイの隣に寝転ぶ。
――ずっと疑問に思っていた。
このアクエスは美しい。けれど決して蒼くはない。それが空や海のことを指すのであれば何処の国も同じはずなのだ。
だがルーティが訊いた時、誰もが揃ってこの島は蒼いと答えた。
……だから一度、この目で確かめたい。
蒼い孤島と称されるに相応しい、アクエスのその姿を。