第七章
「こういうのは人気のない林を抜けた先にあったりするもんだよ」
少年はふふんと得意げに笑う。
「大体、お化けなんかいるわけないし」
「そうか」
その隣を歩く少年の兄は、はあと溜め息を吐いて。
「だったら離れろクレイジー。ただでさえ浴衣で歩きにくいのに」
「に、兄さんが浴衣なんか着るからだろ! 甚平にすればよかったのに!」
「じぶんからゆかたをすすめたくせに」
「うっうるさい!」
ロボットが確認した謎の個体――それはマスター、クレイジー、タブーの三人だった。どうやら彼らは、ある目的の為にここまで歩いてきたようなのだが……
「てか、普段人気ないからって手ぇ抜きすぎ。祭り期間中くらい提灯とかさー」
「クレイジー」
やれやれと溜め息を吐く弟に、マスターはすっと冷たい視線を向けた。
「……怖いんだろ?」
一瞬、クレイジーの口角がひく、と動いた。
「はああ!? そんなわけないじゃん兄さん僕のこと何も分かってないんだね僕がいつ何時何分何十秒フレイアムが何回廻った時にお化け怖いよ助けてなんて」
「あっゆうれい」
「あばばばばごめんなさいごめんなさい!」
僅か五秒足らずで以上の台詞を吐き、最終的にはマスターの後ろに引っ込んでガタガタとそれは携帯機器のマナーモードのように震える様はなんと滑稽なことか。
「ガタガタガタガタガタガタ」
「口で言う奴があるか」
マスターが溜め息を吐く一方でタブーはじっと茂みを見つめ、呟いた。
「……きのせいだったかな」