第七章
がさがさ、と茂みが揺れればそれだけで双方の足は竦んだ。
リュカはぎゅううっと腕にしがみついて顔をうずめ、既に道の先を見ていない。こうなれば頼りになるのは自分だけだ。ネスは勇気を振り絞って道の先に、懐中電灯の明かりを向ける。誰かの足が照らしだされ、安心したのも束の間。
「悪い子はいねがぁぁぁ……」
一方は真っ赤な鬼の面、もう一方は青い鬼の面にケラミノ、ハバキを身に付けて。
「泣ぐ子はいねがぁぁぁ……」
それぞれは大きな出刃包丁を手に、特徴的な台詞を吐く。
ああ、これはもしかして。
「ひぎゃー!?」
なまはげ……?
「わ、悪いことなんか、してねえよ!」
ネスは思わず後退り。
「こないだ、マルスのプリン勝手に食べてなかった……?」
「っ急になに言いだすんだよ、バカ!」
「へぇー食べたんだ」
真っ赤な鬼の面を付けたなまはげ、マルスは一歩、踏み出す。
「食べたんだ……?」
さあっと血の気が引いて。
「待ぁてええええ!」
「いやああああごめんなさいいいっ!」
逃げるネスを恐ろしいオーラを身に纏いながら追いかけるマルス。
「……味方を囮に使うとは。最近の子供は恐ろしいな……」
何故か感心して一目置くアイクに、リュカはきょとんと首を傾げた。
「何のことだろう……」