第七章



「……が一枚」

ユウとリオンは一度、足を止めた。

「二枚……三枚……」

道の先で誰かが屈み込み、何かを数えているのだ。

接近を試みると、それは白の着物を着込んだ女性のようだった。何かを手に数える様子を、二人は後ろからじっと見張って。するとその女性、不意に手を止めた。

「足りない……」

そして勢いよく振り返る。

「うらめしやぁぁぁ……!」

これがありがちな芝居とはいえ、ユウは肩をぴくんと跳ねた。その役を演じていたのはリム。だがしかし、その顔は特殊メイクによって恐ろしいものとなっている。

「……ふふっ。少しびっくりしたでしょ」
「か、勘違ってくれるな。その程度」
「何が足りないんですかあああ!」

突然声を上げるリオンに今度こそ、びくっと大きく肩を跳ねさせる。

「一枚二枚と数えるからには衣服ですか! 足りないからと化けて出るということは相当大切なものだったと窺える! はっもしかして下着! 下着なのか!」

たじろぐリムにぐいぐいと攻め寄るリオン。

「何色ですか! サイズは! 間違えて穿いているという可能性は!」
「……ろ」

リムはぐっと拳を握り締めて。

「牢屋にぶち込むわよっ、この変態!」
「ぶふぅおあっ!?」

結果、リオンが殴り飛ばされたのは言うまでもなく。

「っまたやっちゃった! リオン!」
「いい判断だった」
「お化けも変態さんには敵わないかも……」
 
 
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