第七章
「……あれ?」
ピチカは怪訝そうに声を上げた。
あれだけ余裕のあった道が、急に狭くなっていたのだ。茂みが左右から狭まり邪魔をして、これだと二人が横に並んで歩くのは難しい。嫌な予感がしたのだろう、二人はばっと顔を見合わせて真剣な顔つき、突然のじゃんけん対決。
「じゃーんけーん……」
結果、勝ったのはピチカだった。
「苦手なのよね、こういう分かりやすいの」
先頭を歩く羽目になったリムは急に不安になったのか表情を曇らせて。
一方で後ろを歩くピチカは安心しきっていた。リムの浴衣の袂をしっかりと掴み、あまり前を見ないようにと顔を俯かせる。これなら前方から何がどう飛び出してきようが怖くない。何より、先に驚き声を上げることになるのはリムだ。
「っ、」
……そう思っていた。
「きゃああぁあああ!?」
リムは肩を跳ねさせ、慌てて振り向いた。
悲鳴を上げたのはピチカ。が、そこにはお化けらしき姿はない。それでもすがるように浴衣を掴み、いやいやと首を横に振る。リムは視線を下へと落とした。
「ひっ……」
ピチカの足首を掴む――無数の手。
「い、」
声が出かかったその時、冷たい何かが自分の足首を触れた。
「いやああああっ!」
回し蹴り。
「ぅごふっ!?」
それはネロの頭部にクリーンヒット。
「あちゃー」
「やり過ぎだわ、リム」
ここで仕掛け人のローナとシフォンが茂みからひょっこり。
「え?……ぁ、ちょっ」
「ばかっ! 心臓止まるかと思ったんだから!」
「文句はうちの兄を蘇生させてから言うのね」
魂が抜けきっているネロを、リムが必死に揺すって声をかけている。
「先が思いやられるね……」
「……かも」
尻に敷かれる未来が。見えた気がする。