第七章
次に歩いてきたのはリムとピチカである。
「ふきゃあっ!?」
並んで歩いていたところ、がさがさと音を立てて近くの茂みが揺れれば、ピチカは思わず声を上げてリムの腕に抱きついた。リムは怪訝そうに懐中電灯の明かりで照らしだす。間もなく、にゃあと鳴いて飛び出してきたのは野良猫だった。
「ピチカったら怖がりすぎよ」
「ふえぇ……だって本当に本物が出るかもしんないじゃん……」
ああ、預けておいた饅頭が無残にも握り潰されている。これじゃあ祭壇の神様も苦笑いすることだろう。リムは呆れたように小さく息を吐き出して。
「うぅ……どうせならかっこいい王子様と肝試しがしたかったよぉ……」
「いるじゃない」
かっこいいかどうかは別として。
「ユウ? リンク? ドンキー?」
「なんで私の同期なのよ」
確かに惜しいけど。
……そういえば、どうして彼女はこんなにも鈍感なのだろう。あれだけアピールされていれば否が応でも気付くはずなのに。天然系ってやつなのかな。
「ねえ、」
二人は同時に声を発した。
「えっなになにどうしたの?」
「や、くだらないからいいのよ。ピチカは?」
「うーん……僕も大したことじゃないかなぁ……」
――気付くのはいつになることやら。
なんて。お互い様であることを二人はまだ知らない。