第七章
不意に四人はぴたりと立ち止まった。
……道の先に何かいる。それがじっと此方を見つめているのだ。今まで先頭を歩いていたローナはそれが何か分かると、シフォンの後ろに隠れてしまった。
だがしかし、この饅頭を祭壇に備える為ここで立ち止まるわけには。引き返したら笑い者だ。さすが長男、俺が行ってやるとばかりにネロが一歩踏み出した。
「タチサレ……タチサレ……」
ああ懐かしい。
「うっせえ被り物なんバレバレなんだよ」
こういう、お化け役の人には手を出してはいけないという決まりがあるようだがそんなのは関係ない。俺たちは――こんなところで足止めを食らうわけにはいけねえんだよ! ぱちんと指を鳴らして火を放つ。それは幽霊に化けていたファルコンが頭から被っていた白い布を赤々と勢いよく燃やした。
「ぬおおっ!? 熱い!」
途端に騒がしい。
「これが青春か!」
火力控えめなんだからそんな熱くないっての、なんて思いながら呆れたような目で見つめる。するともう一人、幽霊役として待機していたオリマーが参上。
「炎はよくない」
怪訝そうに、ネロは振り返る。
「鎮火」
バシャンとぶっかけられたのは大量の水。ファルコンに、だがネロ諸共。
「ネロォォォ!」
あの日のように悲鳴を上げることもなく。ふらりと体が大きく揺らいだかと思えば、受け身もなく地面に倒れてしまった。……泡を吹いている。そんなに嫌いか。
「ふむ。余程耐性がないと見える」
「水限定だけどねぇー」
「いくら苦手なタイプだからって兄妹の恥だわ」
散々な言われようのネロにレッドは頭を抱えて溜め息。