第七章
「お化けなんてなーいさ! お化けなんてうっそさ!」
声高らかに、意気揚々に。
次にやって来たのはポケトレ組である。キャラクター型のべっこう飴が先っぽに付いた棒を、歌にあわせて振りながら先頭を歩くのはローナ。
「本当に出てきても知らないわよ」
「いないからへーきへーき!」
なはは、と笑う妹にシフォンはくすっと小さく笑みをこぼす。
「んな非現実的なもん、いるわけねーだろ」
「そうかしら。世の中には誰も知らないようなことがたくさんあるのよ」
「知らなくて結構。本当にこの目にするまでは信じねえよ」
ネロは団扇で首元に風を送りながらふんと鼻を鳴らす。
「でもさー。昔、ネロってば遊園地のお化け屋敷行った時、叫んでなかった?」
ローナは振り返ると後ろ向きに歩いて。危ないよ、とレッドが注意を促す。
「そういえば、あの後ダッシュで逃げ出して出口で腰抜かしてたわね」
ネロはぎくりと肩を跳ねさせる。
「何があったというのかしら」
「本当に本当の本物を見ちゃったとか!」
「……違う」
三人の視線を受けながら。ネロはわなわなと震え、答えた。
「上から降ってきた水滴が首筋に当たったんだよ……!」
えっ?
「お、思い出しただけで鳥肌が立つ。あれ考えたの誰だよぶっ殺す」
「たまたまじゃないかしら」
「ネロの場合、お化けより水の方が怖いかもね」
レッド、苦笑い。