第七章
「もー、そんなに引っ付いたら歩きにくいでしょー」
「黙っていろ……!」
大体貴様が妙な話をするから、とメタナイトはぶつぶつ。もうすっかり腕に抱きついて離れないメタナイトにカービィはにやにや。満更でもないご様子。
「……あっ」
「ひ、」
「何でもなーい」
「私をからかって遊ぶな!」
だがしかし。次の瞬間、背後に気配を感じて。
二人はぴたりと立ち止まった。背中に視線が突き刺さる。互いに視線を交わして小さく頷き、合図。同時に振り返った、そこには黒髪を長く垂らした赤い着物の――
「ぎゃー!?」
「ゲムヲじゃん」
「えっ」
言われて、メタナイトは恐る恐る確認。かくんと首を傾げる、座敷童に扮していたのはゲムヲだったのだ。さっきの今で思わず声を上げてしまったが、ひと安心。
「そんなので僕らを驚かそうっての? 百年修行積んで出直しといで」
「……それはいいが、パートナーはどうした?」
ゲムヲはもう一度首を傾げて。すっと指差した。
「後ろ?」
それ、脅かそうとして回り込んだんじゃないかな。聞かれて素直に答えちゃうなんてチームワークがなってないなあ、なんて思いつつカービィは振り返った。
……そこにはベージュの髪を長く垂らし、淡い黄色の着物を着込んだ女性、じゃなくてロボットがいた。まあ、要するにバレバレなのだ。驚かされる側もこれじゃ微妙な心境だよ、とカービィは小さく溜め息。ロボットはかくんと首を傾げる。
「あのね、驚かすってならちゃんと打ち合わせしてよね」
カービィの説教タイム。ロボットはますます首を傾げて、傾げて……
ぽとりと、首が地面に落ちた。
「いやああぁあああ!?」
猛ダッシュでその場を離れるカービィと、顔を真っ青にしてすっかり腰を抜かし、ふっと意識を失って倒れるメタナイト。ゲムヲは落ちた首を拾い上げて。
「ネジが緩んでいたみたいデス」
ロボットはゲムヲから普通に首を受け取り、嵌め込んだ。
「……反対」
「ああ、そうでした」
さすがロボット。洒落にならない。