第七章
はてさて、次に歩いてきたのは。
「ふと鏡を見てみると。なんとそこに頭から血を流し、長く垂らした黒髪の合間から見開いた目を覗かせる女が映り込んでるじゃありませんか」
怖い話の真っ最中。カービィとメタナイトである。
「慌てて振り返ってみましたが、そこには誰もいない……気味が悪くなった少女は後日、買ってきた布を鏡に被せて倉庫の中に仕舞うことにしました」
吹き抜ける冷たい風に草木がざわつく。
「それから暫く経って、少女は倉庫の整理をすることにしました。あの鏡はどうなったのか。ふと、気になって埃の被った布を捲り上げてみると」
さりげなく寄り添うメタナイト。
「幾つもの赤い手形がべっとりと鏡にこびりついていたのです。そう、あの時の女は少女の後ろではなく鏡の中にいた。布を被せられていたが為に出られなくなってしまい、出して、出してと鏡を叩いて……ですが、鏡の中にもう女はいません」
何故なら、とカービィは続けて。唐突にメタナイトの両肩を掴む。
「今度は少女の後ろにいたのだから」
「ぎゃああぁあ!?」
良くも悪くも響き渡るメタナイトの悲鳴。
「お、お、脅かすな!」
「あれぇもしかして怖かったとか?」
「そっ」
……そんなわけがあるのである。
「い、今のはフィクションなんだろうな」
「んふふー、どっちだと思う?」
意地の悪い物言いをするカービィに、メタナイトは。
「……知らん」
きゅ、とカービィの腕を掴んだ。