第七章
「兄ちゃん」
ディディーは腕を引いて。
……誰かが道の真ん中でうずくまり、何かをしていたのだ。ぐちゃ、ぐちゃ、と妙な音を立てて、その“何か”を貪っている。
「何や……?」
それが何かは分からない。ドンキーは眉を寄せ、懐中電灯で照らし出した。
その人物はゆっくりと振り返って。
「ぁ」
頭に生えた灰色のそれは紛れもなく、狼の耳だ。鋭い牙で喰らっていたのは、暗がりで見えなかった女性のハラワタ……
「出たああぁあっ!」
ドンキーもディディーも真っ青になって声を上げ、懐中電灯も饅頭も放って駆け出した。――元来た道を、戻るように。
「待ってください、そっちは」
「追ってきてるうぅう!?」
人喰い狼男を演じたリンクは、イチゴジャムパンを片手に追いかける。それが逆効果なのはもちろん、承知の上で。
「二人共、逃げないでくださいよー」
「来んといてえぇえ!」
女性役、サムスは起き上がって溜め息。
「まだまだ子供ね……」