第六章
「う、ウルフ!」
そんなことしちゃ駄目だよ、とルーティが叱ろうとしたのも束の間、遮るようにしてウルフに差し出されたものは。
「……ん、」
「えっ」
初めに狙った、兎のぬいぐるみである。
「別に、勘違いすんなよ」
ウルフは目を逸らして。
「深い意味はない……ただ、何となく、オメーなら似合うだろうなって……」
「僕よりピチカとかにあげなよ」
暫くお待ちください。
「さっさと歩け」
「何で僕打たれたの」
拳骨を食らい、立派なたんこぶを貰っても尚、ルーティは納得がいかない様子。
「知るか」
ぷいと顔を背けたウルフだったが、
「ま、いいけどさ」
ルーティが兎のぬいぐるみを、しっかり腕に抱えてるのを尻目に捉えると。
「……ふん」
彼の視界の外で、密かに顔を綻ばせた。