第一章
奇跡的なことに、この日は全員時間が空いていて。もちろん、仕事がある者もいたのだが、夕方からなのでさして問題は無く。
今日中にバカンスに必要な物を買い揃えられるかはさておき、レイアーゼ繁華街にあるデパートへ。それはいいのだが。
問題は――それまでの道程。
「ビルが多い所ってさぁー」
早くも暑さでふらふらしながら、ローナは手の甲で額に滲んだ汗を拭って。
「云々の関係で、暑いらしいんだよねー」
しつこいようだが、レイアーゼは近未来都市。何処よりも文化が発展している此処は、当然のようにビルも多い。
特にこれは、ミラービルのせいだろうか。
いくつもの太陽を映し出し、余すことなく日光で照らしている。デパートに辿り着く前に、干からびてしまいそうだ。
「これは」
リンクは苦笑混じりに。
「本当に干からびそうですね……」