第六章
「あっ」
その時、着替えを終えたのかウルフがネスと共に部屋を出てきた。彼は限りなく黒に近い、グレーの甚平を着ていて。
「……着替えたのか」
ルーティに気付き、一旦は立ち止まるが。
「う、うん」
「行くぞ」
服装や髪型について話を展開させることもなく、玄関へ。……もうっ。この浴衣を選んでくれたのはウルフの方なのに。
「はぐれないようにねー?」
「おにぃ、お祭りで会おーねーっ!」
呼びかけるリムとピチカを振り返ってひらひらと手を振り、ウルフの隣へ。慣れない草履を履き、いよいよ別荘の外へ――
祭囃子が出迎える。
別荘を出るとそこはもう別世界で、老若男女様々な人間が夏祭りという行事に心浮き立たせ、交差し、楽しんでいた。
様々な食べ物の匂いが、大人子供問わずに誘う。どれを食べようかな、なんてルーティが屋台を遠目に見つめていると。