第五章



「ありがとうございました!」

その後の展開は簡単なもので、武器を所持していた二人に恐怖を感じた大柄の男は取り巻きの男を引き連れ、早々に退散。

びしょびしょになってしまったが子供達はそれぞれの荷物を手に傘を差し、(恐らくは)助けてくれた男二人に頭を下げて。

「ふん」
「ごめんね。素直じゃないんだ、この人」

ふいと顔を背ける長髪の男に、黒髪の男は苦笑を浮かべて。ピチカから紙袋を受け取りながら、気にしないでねとフォロー。

「あっあの、名前は……」
「知らない人に名前聞くなって」
「そうだぞピチカ。一期一会だぞ」

じゃああんたらは何なんだ。

「そうだねぇ」

黒髪の男は悩んでいたが。

「……お嬢ちゃんが大きくなったら、迎えに行くよ。名前はその時にでも、ね」

気障な台詞を吐いてピチカの手を取り、手の甲に口付ける。そうして笑いかけるだけで、ピチカはぽうっと見つめて。
 
 
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