第五章



「ちょっと借りるよ」
「え」

すると黒髪の男は横切る際にネスの手から傘を奪い、薙ぎ払って。そのまま大柄の男の元へ、まず右上から左下へ振り下ろし。

「っとと、危ねえなぁ」

しかし、受け止められる。そんなのは承知で、黒髪の男はひょいと体重を乗せて飛び上がると膝に重心を乗せ、腹目掛けて膝蹴り。怯み、傘を手放したところで上下持ち変え、持ち手で顎を打ち上げる。

先端を地面に付き、再び飛び上がって顔の側面を蹴り付けて薙ぎ倒す。仰向けに倒れたところで傘を正しく持ち直し、喉元に先端を宛がって終了。実に、早かった。

「やっぱかっこいー……!」
「どう思う?」
「俺に聞くなよ」

きらきらと瞳を輝かせるピチカに、ディディーとトゥーンは当然ながらつまらなそうで。とはいえ、敵の大将の動きさえ封じてしまえば後のことは――

「動くなっ!」

そう、上手くはいかなかった。

一人の男がリュカを捕らえ、こめかみに銃口を宛がっている。これにはさすがのネスも目を開き、言葉も出てこなくて。
 
 
57/67ページ
スキ