第五章
「あぁ? ボコられてえのか」
「……わるな」
長髪の男、小さく口を開いて。
「は」
「触るな!」
今度は語気を強めてはっきりと、そして振り向き様に回し蹴り。腹部に見事喰らった男は後方によろめき、腹を抱えて両膝を付く。他の取り巻きの男達も気付いて。
「何しやがる! この、男女!」
「あー」
そりゃあ禁句だよ。
黒髪の男がそう思ったのも束の間、長髪の男の目付きが変わった。先程よりも断然鋭くなり、不意ににやりと笑って。
「くく……上等だ。虫けらめ」
乱闘勃発。といってもこの長髪の男、戦闘が未経験という訳でもないのか華麗な立ち回りで相手の急所に攻撃を与えていく。
ピチカは思わず見惚れていたが、自分を捕らえている男も同じく見惚れていることに気付くと、ぐっと腕を引いて。
「って!」
力強く、噛み付いた。