第五章
「って」
その時、取り巻きの内の一人の男が、今しがたスーパーマーケットから出てきた男と肩がぶつかった。特別苛々していた訳でもないが、取り巻きの男は。
「おい。何処見てほっつき歩いてんだ?」
と、横切ろうとした男の肩を掴んで。
男は緑色の髪を腰まで長く流しており、それでいて細身な体つきと肌の白さが容姿を中性的に魅せていた。
それとは似つかわしくない切れ長で、金色の瞳が男を尻目に捉える。
「何だぁ? その目はよぉ」
「やめといたら?」
長髪の男に噛み付く男を制するように、商品を詰めた紙袋を抱えた男が遅れてスーパーマーケットから出てきた。
その男の髪は黒く、天然パーマで。くるりと巻いた髪の中に埋もれるように、黒い猫、いや、豹の耳が生えていた。
もちろん、尻には尻尾も。長髪の男とは対照的に色黒だが、右の頬には白く変色したのであろう大きな傷跡が目に付く。