第五章
特殊能力が使えない――
分かってる。この蒼の孤島アクエスにいる限り、自分達は一般人なんだって。
特殊能力を使い、本当の意味で一般人である彼らに怪我を負わせるわけにはいかない。何よりその場合、此方がX部隊だとばれてしまった時に支障が生じる。
肝心の政府に知らせてない上、替え玉は本来なら敵であるダークシャドウ。それに加えて一般人に手を出したともなれば……
「くっ」
とにかく、自分達の力で何とかするんだ!
ネスは暫く傘を振り回して抵抗を試みていたが、雨の中疲労も早く、浅い呼吸を繰り返して。取り巻きの男は笑いながら、
「ほら。どうしたよ坊主」
「かかってこいよぉ」
と、挑発。
特殊能力を使えないのでは、迂闊に手も足も出せない。ネスもリュカも、普段は超能力で己をサポートしていたのだから。