第五章
「兄貴に何てこと言いやがる!」
「そうだ!」
「生意気な餓鬼め!」
気付けば複数の取り巻きと思われる男がディディーとトゥーンを取り囲んでいる。
ネスとリュカの前には大柄の男と取り巻きの男。何かがやばそうだ、とネスとリュカは後退、ごくりと息を呑んで。
「損害賠償っての知ってるかい? 坊や」
大柄の男は一歩前に出ると、にやり。
「兄貴を傷付けた罪はでかいぜぇ?」
「そうだ。慰謝料も貰わねえと」
勝手なことばかりずけずけと。
「このっ」
「きゃああぁあ!」
我慢ならなくなったディディーが一歩踏み出したその時、雨空を劈くような悲鳴が上がって。慌てて、振り返るとそこには。
「いやっ、離してよぉ!」
取り巻きと思われる一人の男が、ピチカを背後から捕らえていたのだ。持っていた傘は地面に落ち、雨に打たれて。