第一章
鶴の一声、とはよく言うが。
席を離れていた者は早々に席へ戻り、朝食に手を付けて。ルーティも立ち上がると席に座り、合掌。まずは牛乳を飲み、一息。
「……ねえ、ウルフ」
フォークでサラダを一口頬張り、味わって飲み込んだところでちら見。声をかける。
「何だ」
「ウルフ、は……迷惑だった?」
そういえば、ウルフに限っては何の反応も示していない。確かに彼は一匹狼タイプだし、仕事も大抵単独のものを選んでたし。
彼は、本当に単純に仕事を生き甲斐にしていて、だから今回三日後に一週間の休暇を取ったのは、迷惑だったのかも。
「別に」
素っ気ない返事。
すると、ちょうど後ろに背中合わせで座っていたネロが、フォークを口に銜えたままルーティの背中を小突いて。振り向いたところを親指でウルフの尻尾を差す。
あ。……ふさふさの尻尾が、揺れている。
「ふふっ」
「……、どうした」
「何でもない」
なぁんだ。――喜んでくれてるじゃん。