第五章



「っわ」

その時、後ろ歩きをしていたが為にネスは背中から一人の男にぶつかり、小さく声を洩らしてから慌てて振り向いて。

リュカはその隙に同じ傘の中に入り、ネスを見つめ、ぶつかった男を見上げる。

「……いてえ」

男はぽつりと呟いて。

「いってえなぁ! おい!」

突然声を上げるものだから、ネスとリュカはびくっと肩を跳ねさせて後退。

離れた位置にいたディディーは傘を差しつつ、眉を顰めて。その大柄の男は左肩を押さえ、わざとらしく顔を歪める。

「いててて……くっそ、折れちまった」
「ひでえ、兄貴に何てことを!」

取り巻きの男が大柄の男の元へ向かい、身を案じながらネスとリュカの二人を睨み付けて。もちろん、そんなのは嘘だ。

「す、すみませ」
「謝ることねえよ。だって、嘘だろ」

謝ろうとしたネスの台詞を遮って、ディディーは口を開く。同じ傘の中に入ったトゥーンも、うんうんと頷いて。
 
 
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