第五章
ユウは目を凝らして。
買い物客の中に、リオンらしき男の姿は見当たらない。ユウは頭の上に疑問符を浮かべていたが、不意にはっと目を開いて。
「すみません、トイレは何処ですか?」
あの店員、まさか。
「分からないのだな! ならば一緒」
いた。本当にいた。
「に、ふごぉっ!?」
なんとリオンは店員に扮してレジに立っていたのだ。彼が相手の女性の手を取り、最後まで言い切る前にユウが飛び蹴り。
カウンターの下に倒れたリオンの腰に跨がり、胸ぐらを掴んで起こしながら。
「何をしている」
「ユウは積極的だな……!」
「貴様相手に消極的になってたまるか」
誰が犠牲になるかも分からないのに。
それにしても、先程の男はここの店員だったというわけか。まあ、彼にしてみればサボれるのだから歓迎なのだろうが。