第五章
「どうもこうもないッスよ」
男は頭の後ろで両手を組みながら、困ったように溜め息を吐き出して。この様子から察するに、被害者は男の方らしい。
「そいつ、いきなり俺んとこ来て、服を取り替えてくれとか言い出すんスから」
とんでもない変態だ。まさか此処に来て一般市民にまで手を出すとは。
それにしても、この男。抵抗はしなかったのだろうか。出会い頭に服を取り替えてくれなんて頼まれたら、普通は断るはず。
「連れが迷惑をかけたな。……それで、奴は今何処にいるんだ」
「ああ。あっちにいるッス」
男が指差した先にはレジがあった。
一般市民に成り済まし、怪しい商品を購入して店員(特に新人)の反応を見て楽しもうというわけか。変態め……とは思いつつも、リオンらしき人影は見当たらない。
ユウが眉を顰めていると、気付いた男はもう一度分かりやすく、指差して。
「ほら。あれッスよ、あれ」