第五章
「なあ」
おったんかい!
未だ立ち去っていなかったディディーに驚いて思わず身を引いたが、見られる前にと雨合羽で顔だけはしっかりと隠して。
「な、何でしょう」
「関西人?」
バレた。
当たり前か。普段、同室の実の兄が関西弁を使っていれば、例え敬語だろうが訛りで気付く。ドンキーは狼狽えていたが、
「……友達、行ってしまいますよ」
あくまでも敬語で。
ディディーは「やべっ」と小さく声を洩らして追いかけようとしたが、ふと、ドンキーを振り返るとにこりと笑って。
「おおきにっ」
そう言って立ち去るディディーに、ドンキーは目を丸くした。――そういやあいつ、俺と同じ関西人やったわ。
何はともあれ、気付かれなくてよかった。