第五章
決して、男が軽かったのではない。
この、桃色の髪の男の力が強いのだ。いとも簡単に、男の体は床に叩き付けられて。
「平気か? 坊主」
桃色の髪の男はディディーの傍らに跪くと、腰に手を回してひょいと持ち上げ、立たせてやり。ディディーは困惑しながら。
「あ、ありがとうございま――」
ふと顔を上げる。桃色の髪の男の後ろには、先程の男がナイフを振り上げていて。
「な……」
声を洩らしたのは男の方だった。
ディディーも息を呑んで。なんと桃色の髪の男は後ろからの奇襲に、振り向かず、肩に刺さる寸前で男の手首を掴み、止めたのだ。これにはさすがのユウも、目を開き。
「あかんあかん。そない殺気出して、バレバレやん。ほんまに殺りたいんとしても」
桃色の髪の男、鋭い瞳を男に向けて。
「ワイだけは辞めとき――」