第五章
「おっと」
隙を見てディディーが逃げ出そうとするも、男は尻尾を掴んで。途端にへなへなと力が抜けて、床に座り込むディディー。
「は、離せ……っ」
上手く力が入らない。涙で潤んだ瞳を男に向け、精一杯睨み付ける。
「大丈夫大丈夫。怖くないよ」
男が尻尾をぐいと引っ張ると、今度こそ力は完全に抜けきってディディーはくるくると目を回して骨抜きに。その隙に男は、
「すぐに良くなるからねぇ……」
もう片方の手で、ファスナーを下ろす――
ドカッ!
ユウも今まさに超能力を発動しようと瞳に金色の光を宿した、その時だった。
トイレには先客がいたのか、とある個室の扉が勢いよく吹っ飛んで。蹴り飛ばしたらしい張本人は、真っ直ぐ男の元へ向かい。
「変態なら」
驚く男を差し置いて、腕を掴むと。
「余所でやれ!」
勢いよく、背負い投げ。