第四章
小さく舌打ちし、駆け出した男がいた。
ウルフである。フォックスは思わず口を開いたが、呼び止める場面でもなく。
「ちょっと見てくる!」
「フォックス!」
形振り構っている場合じゃない――フォックスは一言そう告げて、ウルフの後を追いかける。海に入り、水を掻き分け進んで。
「ウルフ、ここは俺に任せて戻れ!」
「どうしようと俺様の勝手だろ」
ウルフは聞く耳も持たず、大きく息を吸ってから海の中へ。フォックスもゴーグルを装着し、ウルフの後を追いかける。
「ん……」
視界いっぱいに美しく澄んだ水の世界が広がる。とはいえ、緊急事態なので見惚れてる暇もなく、フォックスは見回して。
しかし、ルーティの姿は見つからない。
いないならそれでいい。砂浜に戻って、そこにいてくれたらどんだけ気が楽か。