第一章
「……あのぅ」
恐る恐る、声をかけてみる。次の瞬間、大きく息を吸い込む音が聞こえて。
「ふざけんな! こっちだって裏社会のいざこざ回収したり、真っ黒な依頼受けたり忙しいんだ! 他を当たれ、阿呆!」
ブツッ!
電話を一方的に切られ、終了。
世の中思い通りにならないものだな、と苦笑混じりに携帯を閉じる。さっさと諦めようとルーティが寝転ぼうとした、その時。
トゥルルルル
何の捻りも無い着信音が鳴り響いて。
既に寝ているウルフを起こさない内に、とルーティは手早く電話に出る。
「もしもし」
電話の相手は沈黙していた。
「……、あれ。スピカ?」
登録している電話番号なら、画面に名前が表示されるのである。しっかりと名前を確認したルーティは、呼びかけて。