第三章
そういえば。
ぱっと見、トゥーンが被ったのは墨でも血糊でもとろろでもない。寧ろ、本当に普通の水を被ったようにしか見えないが――
「教えてやろう!」
そこで現れたのは!
……言わずもがな、リオン。同時にウルフとドンキーもやって来たので、彼らの目の前で下手な真似は出来ないと思うが。
「し、正体は……」
ディディーはごくりと息を呑む。
するとリオン、ふっと笑ったかと思えば片方の手を腰に当て、もう一方の手で勢いよくトゥーンを指差すと誇らしげに。
「それは今朝、山の麓で採れたばかりの新鮮な硬水なのだ!」
硬水――カルシウム塩類・マグネシウム塩類を多く含んだ天然水。洗濯・染色などには適しない(明鏡国語辞典MX引用)。
つまり、ただの水かよ!