第一章
夏といえば定番の海水浴に夏祭り、花火大会に肝試し。その他にも色々あって、とても一日では遊び切れない。
真夏の海でバカンス……夢のまた夢だな。
「いくら考えたって駄目ですよ」
リンクは溜め息を洩らして。
「俺達には休む暇なんて無いんですから」
「いちいちうっせーなあ! 夢見るだけならタダだろ……ったく。もう寝るぞー」
現実を叩き付けられ、ロイは不服そうに唇を尖らせた後、諦めてピットに呼びかける。それまでソニックと話していたピットは、片手を挙げてからロイの元へ。
「Good night!」
ひらひらと手を振るソニック。
そうして並んで立ち去るロイとピットの背中を見つめながら、リンクは嫌に現実的だなとルーティは思う。
――本当は、彼のような人間こそ、バカンスに一番憧れているのかもしれない。
「僕達も寝よっか」
欠伸を洩らすウルフの服の裾をくいくいと引っ張り、ルーティは小声でそう告げた。