第三章
ピチカが何か口を開く前に、トゥーンは手を引きながら駆け出していた。
「待っ……トゥーン! ディディーが!」
ピチカは不安げに声を上げて振り向き、ディディーの背中を見つめる。トゥーンは真っ直ぐ正面を向いて走りながら。
「あいつなら……大丈夫」
ひと呼吸置いて。
「好きな女の子を簡単に渡してやれるほど、生易しくは出来ていないからな」
一方、此方はディディー。
横目でトゥーンとピチカの背中を見送った後、目の前まで駆けてきたリンクから逃げるべく、観覧車のある方面へ逃げ出して。
振り向けば、予想通りリンクは追ってきている。ディディーは「よし」と呟くと、路傍に生えた木に飛び乗って。
すかさず、木の傍らに駆け寄ったリンクは幹に回し蹴り。バキッと一瞬にして木は折られ、ディディーは驚愕の声を上げる。
「嘘だろぉ……っ!?」