第三章
「嘘……」
ぽつりと呟いて、ピチカは己の瞼を強く擦っては瞬きを繰り返す。――幻覚じゃない。あれは実際に、そこにあるのだ。
ジェットコースターに、観覧車。メリーゴーランドにコーヒーカップ。鬼ごっこなんかより、こっちで遊び呆けたい気分だ。
「ルールを説明しよう」
五人が揃って遊園地に見惚れていると、先程の青年、ベンゼルの声が空に響いた。
当然、彼の姿は何処にも無く。
「ルール?」
すかさず、ネスが聞き返す。
「そんなら知ってるぜ? 単純に、鬼に捕まったら駄目ってことだよな?」
ディディーが鬼ごっこの正式なルールを口にすると、ベンゼルはくすっと笑って。
「それだけでは面白くないだろう」
確かに、その通りかもしれない。
五人が黙っていると、空から何者かが静かに降り立った。銀色の髪に、白く染め上げられた、ぼろぼろの服。
そして、仮面。トゥーンは目を開いて。
「兄……ちゃん?」