第一章
「ちょっと!」
「いいじゃん。どうせ未完成だし」
リムは子供のようにぷくうっと頬を膨らませていたが、それでも構わず、ダークリンクは小さく笑っては黒い楽譜を摘まんではひらひらと揺らしながら。
「俺のパートナー、音楽には詳しいんだよ。それにこれ、まだ前奏だけしか書かれてねーし……これじゃ歌えないだろ」
ダークリンクのちょっとした心遣い。
リムとルーティが目を丸くして顔を見合わせていると、ダークリンクはふんと鼻を鳴らしてから二人に背を向けて。
「じゃ、完成したら見せてやるよ」
そう告げて、ダークリンクは立ち去る。
ルーティは慌ててその後を追いかけたつもりだったが、角を曲がると同時に見失ってしまい。ルーティは小首を傾げて。
「逃げられちゃったわね」
隣に並んでは呟くリム。
しかし――その表情は柔らかく、嬉しそうだったのは気のせいだっただろうか。