第一章
ルーティも、幼い頃は子守唄を聞かされたことがあった。すぐに寝てしまった記憶も。それほど、彼女の歌声は優しくて。
だからこそ、リムの心の内を明かされると、ルーティは何も言えずにいた。その代わり、開いた本には真面目に目を通して。
「そんなに歌手がよかったんなら、戦士なんて辞めちまえばいいのに」
ダークリンクの本音。
変なことを言うな、とルーティは本を閉じて立ち上がるとダークリンクに歩み寄り、正面から本で思い切り頭を打って。
「てめっ」
痛みに顔を歪ませ、ダークリンクは苛立ちを感じてルーティの胸ぐらを掴む。
「いいのよ。そんな……あらっ」
宥めようとしたリムだったが、不意に小さく声を洩らしてその場にしゃがみ込み。
どうやら、次の本を抜き取る際に本と本の間に挟まっていた紙が、引っ張り出されて落ちてしまったらしい。