第一章
スピカを再び肩に担ぎ、立ち上がったダークリンクを見てタブーは切り株から下りると、軽やかな足取りで歩み寄り。
「ね、どこにいくの?」
タブーは両手を後ろに回して指を絡ませながら、楽しそうに訊ねては見上げて。
ダークリンクは鬱陶しそうに睨み付けていたが、彼があの危機的状況から救い出してくれたのは確かなのだ。
「……エックス邸」
仕方なさそうにダークリンクが溜め息混じりに答えると、途端にタブーは瞳をきらきらと輝かせて機嫌が良さそうに。
「ぼくもいくよ」
それを聞いたダークリンクは小さく舌打ちをすると、スピカを肩に担いだまま早足で歩き出した。――善は急げ、とは言うが。
「……く」
疲れているのだろうか。
エックス邸に向かう途中、何度も目眩いがして、ダークリンクは立ち止まり。先を歩くタブーは振り向いて、小首を傾げる。
「別に――」
月が暗雲に遮られ、陰る。ダークリンクはふと、顔を上げては夜空を見つめて。
「何でもねぇよ」
間もなく、瞳に赤黒い光が宿った。