第一章
「リムの趣味を押し付けないでよ……」
膨れっ面でルーティが文句を言うと、リムは鼻歌混じりに本を手に取って。
ルーティは大袈裟に溜め息を吐き出すと、積み重ねられた本の一番上に置いてあった白い表紙の本を手に取っては開いた。
学校に通っていた頃は昼休み、暇潰しに図書室に行っては本を眺めていた時期もあったが……今思えば何が楽しかったのやら。
「音楽が好きなのかよ」
一通り読み終えたのか、本をテーブルの上に置いてはダークリンクは訊ねて。
リムはぴたりと静止すると、
「……笑わないでね」
そう告げて、此方には背を向けたまま。
「本当は、歌手になりたかったのよ。でも、結局戦士になっちゃった。嫌じゃないけど、やっぱり諦めきれないのよね」
リムは時々、エックス邸の庭の木陰で子供達に歌を歌っていた。その歌声は心地好く、誰もが聞き入るほど美しく。