エピローグ
「……違和感を感じたんだ」
ルーティは静かに続けて。
「いつもみたいに笑って接してくれる、皆に。悪いことじゃない、空っぽになってしまったあの日とはあまりにも不釣り合いで、戸惑っていたんだ。……だから」
違和感を、感じた。
「夢じゃなくて、現実なんだよね」
心の何処かで忘れようとしていた。
悪夢の数日間。誰もが忘れようとしていた。なかったことにしようとしたんだ。
いつもの笑顔で。いつものやり取りで。
「全部、本当なんだよ」
ウルフの表情に影が差していく。
「消し去りたい過去も、不安になる未来も、見せられた悪夢(それ)は自分の弱さなんだ。誰かの為、自分の為と心の奥に仕舞ったら、いずれまた繰り返してしまう……」
ルーティは目を細めて。