最終章
終わらせるんだ。
スピカはダークスコアの正面に立つと、剣を逆手に持ち、振り上げた。何故だか恐怖を感じて震える手に、そっと触れたのは。
「ルー……」
にこりと笑う、ルーティだった。
「……終わらせるんでしょ」
自分がそう思ったことなのに、スピカははっと目を開く。小さく息を吐き出して。
「まぁな」
「少なくとも、僕はそれでいいと思う」
スピカはこくりと頷く。
「……優しかったさ。でも」
「分かってる」
ルーティはスピカの手を包み込むようにして己の手を重ねると、微笑んで。
「――終わらせよう」
夢幻の剣は影を斬る。
「一つだけ」
「え?」
スピカは辛そうに、精一杯の笑顔で。
「お前は最高のダチだよ。ありがとな」
振り上げられた剣は間もなく、ダークスコアに突き立てられた。
勢いよく噴出される黒い煙と解放された人々の魂は、五線譜の上で踊る音符のように。己の在るべき場所へと戻って……
悪魔の舞台は、幕を下ろしたのだった――